2019年に触れた音楽たち〜劇伴・BGM編 #2:TVアニメ 八月のシンデレラナイン

こんにちは 4g0_2 です。前回の記事では2019年冬アニメ「TVアニメ 私に天使が舞い降りた!」について書きました。

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キャラクターごとにスポットライトが当たる劇伴と、それらを美しく纏めて昇華させた最終回のミュージカルは2019年だけでなくここ数年で屈指の劇伴だったかと思います。

 

さて、今回の記事ではわたてんと同じく今年にTVアニメが放送された「TVアニメ 八月のシンデラナイン」とその劇伴について簡単にレビューしていこうと思います。

 

八月のシンデラナイン(以下、ハチナイ)はアカツキが送る野球型青春体験ゲーム(野球ゲームとは言っていない)です。リリース延期はあったものの、2017年6月にリリースされたアプリゲームながらTVアニメ放送開始が2019年4月という比較的スピードのあるメディア展開がなされたコンテンツです。私も声優に釣られてアプリ配信時からプレイをしているのですが、序盤以外ほとんどストーリーに関与しない主人公(通称「地蔵」)やどこまで行っても畜生なキャラクターたちが織りなすストーリーの良さのためになかなか辞め時が見つからないアプリだなと思っています。ストーリーの良さはスタッフ陣が葉鍵好きという側面が大きく効いているそうですが、確かにストーリーの端々にそのエッセンスを感じますね。青春モノでストーリー重視のゲームをやりたいとしたら間違いないくハチナイをオススメします。

 

 

そうなんです、このゲームは「野球型青春体験ゲーム」なんです。今となっては野球の試合の画面もそこそこしっかりして、代打や盗塁などの監督らしい指示ができるようになりましたが、配信開始からしばらくは試合画面はスコアボードが表示されて淡々と点数と安打数、失策数が更新されるのを眺めるゲームでした。「やきうが絡む声優コンテンツだ!」とワクワクしていたオタクくんがまさかの試合関してオーダー編成以外全く関与できないと知った時の絶望はなかなかキツいものでした。試合がそんな仕様でフルボイスというわけでもないゲームでも続けられたのは、ひとえにストーリーの良さが際立っていたからだと思います(しかしデレストは許されない)。

(これはアニメハチナイでスコアボードが映って感傷に浸るオタク)

 

そんな野球型青春体験ゲーム・ハチナイが2019年4月からアニメ化されたわけですが、ご存知の通り色々な側面で大きな反響を集めました。アニメのメインキャラクター選抜も含めマイナス面も多々ありましたが、ストーリーに関しては今年のアニメの中でも上位に入る評価をする人を多く見受けます。野球を通じて「友情」「チーム」「戦友」をテーマにしたストーリーは放送延期があったアニメでありながら見事な結末を迎えることができました。

 

アニメ・ハチナイは楽曲に関しても名曲揃いでした。OPの「エチュード」とEDの「どんなときも」、そして最終回の挿入歌「世界でいちばん熱い夏」はどれもアニメ・ハチナイを語る上で欠かせないでしょう。洗練された脚本に対して相乗効果をもたらした楽曲たちは、キャラクターの感情表現や試合の白熱感を演出する要素としてアニメ・ハチナイを誰もが忘れられない夏に仕上げました。特にEDのカバー曲「どんなときも」は主人公・有原翼だけでなく、登場した全ての選手と監督に通じる内容となっていて、毎回違った感情で「どんなときも」を解釈することができる、まさにアニメ・ハチナイのテーマ曲だと言えるでしょう。

 

歌唱楽曲に関してだけでも結構な分量書けそうなアニメ・ハチナイですが、そのストーリーを際立たせたのは歌唱楽曲だけではありません。アニメ・ハチナイを通じてそのストーリーの輪郭を描き出す劇伴が非常に印象的でした。サウンドトラックは発売から少しした後サブスクが解禁され、非常にアクセスしやすいものとなっています。

album.link

アニメ・ハチナイの劇伴を担当されたのは小畑貴裕氏でした。最近でいえばハチナイの他に「約束のネバーランド」が有名でしょうか。小畑氏が関わった劇伴作品は林ゆうき氏との共作のものも多く、ストーリー展開・場面に合わせた強力な劇伴を書き上げるのが特徴的な作曲家です。

そんな小畑劇伴ですが、アニメ・ハチナイではメインテーマ「八月のシンデレラナイン main theme」とそのアレンジ劇伴は歌唱楽曲と同等かそれ以上に強烈な印象を残しました。この曲を聴いたらすぐに里ヶ浜女子硬式野球部の夏の色々な場面を思い出す人が多いでしょう。アニメ・ハチナイと深く結び付けられているメインテーマですが、押さえておかなければならないのはその使われ方です。メインテーマとそのアレンジは様々な要所で使われましたが、1話冒頭と最終話(12話)の最後で流れたメインテーマはまさにアニメ・ハチナイのメインテーマとしてハチナイの清く熱い青春ストーリーの印象を視聴者に残していきました。

また、試合シーンでは、最終話で挿入歌「世界でいちばん熱い夏」が流れる前のシーンで流れた「八月のシンデレラナインup tempo ver」はクライマックスへ向けて白熱した試合展開をさらに盛り上げました。この曲が流れた場面で1話冒頭のシーンが流れたことが記憶に残っている人も多いでしょう。1話の頃からこれは最終話のシーンだと予想できるものでしたが、最終話のそのシーンでは12話に渡るストーリーとストーリーを経ることで確立したキャラクターに対する印象によって1話冒頭とは同じ映像でありながら全く異なった景色が映し出されていました。劇伴もそれに合わせるように、1話冒頭でも流れたメインテーマのアレンジが里高女子硬式野球部のクライマックスへ導きましたね。

メインテーマのアレンジでもう1つ忘れてはいけないのは、ハチナイ屈指の名シーンである6話「これからの私たち」の最後に流れた「ひまわり畑のグラウンドで」です。主人公・有原翼とその「親友」の河北智恵の二人の関係が取り上げられた6話ですが、すれ違った二人が和解(和解?)するシーンで流れたこの曲ですが、作中の最も重要な二人の関係性を描く曲としてこの上ない役割を遂げていました。6話でも特にこのシーンで作品のテーマでもある「友情」と「戦友」に深く切り込むわけですが、劇伴もここに作品のテーマがあるんだよと言わんばかりにピアノとストリングスを主体としたメインテーマのアレンジを流してきました。アニメ版では「ひまわり畑のグラウンドで」は短く編集されて使われていましたが、ぜひサウンドトラックでフルで聴いてほしい一曲になっています。

 

メインテーマが強烈な印象を残す劇伴は数多くありますが、アニメ・ハチナイに関してはそのアレンジも含めて作品を象徴するシーンで作品のテーマと共にあり続けた素晴らしい劇伴でした。ちなみにハチナイ劇伴で一番好きな曲は「ちぐはぐ同盟」です。

 

みんなハチナイアプリやってね。デレスト沼楽しいよ。